【ニューヨーク=山内菜穂子】高インフレが長期化する米国で人々の老後の見通しが厳しくなっている。米民間調査によると、退職予定年齢は64歳と2021年の調査より1.4歳上昇した。退職時期を遅らせる理由として、貯蓄の必要性や医療費の上昇への懸念が上位にあがった。
米金融サービス会社のノースウェスタン・ミューチュアルが25日、米国の成人2381人を対象に2月に実施した調査を公表した。
快適な老後のために必要と考える資金が増える一方で、退職時の貯蓄は減少していることもわかった。快適な老後を過ごすために必要な蓄えは125万ドル(約1億8000万円)と21年に比べ20%増えた。一方で退職時の平均貯蓄額は11%減の8万6869ドルと乖離(かいり)が目立つ。
同社は「インフレの高まりや金融市場の変動により、多くの人にとって先行きが不透明な時期が続いている」と指摘。さらに新型コロナウイルス禍から日常が戻るにつれて家計の支出が増えていることも老後の見通しに影響しているとみている。
米国内のインフレは高止まりが続いている。米商務省が28日発表した9月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比で6.2%上昇した。伸びは8月と同じだった。